浜松にうなぎ養殖地がある理由

「浜松とうなぎにはどんな関係があるの?」
「浜名湖にうなぎの養殖場が増えた理由は?」

静岡県浜松市の中でも浜名湖周辺にはたくさんのうなぎ養殖場があります。
それではなぜ浜松にうなぎ養殖地ができたのかご存知ですか?

こちらのブログではうなぎと浜松の関係やうなぎ養殖地の歴史、そこで生まれた「浜名湖うなぎ」の魅力などを詳しく紹介していきます。

縄文時代から食べられていたうなぎ

日本とうなぎのかかわりは古く、縄文時代にまでさかのぼります。
茨城県にある国指定の史跡「陸平貝塚」では、縄文時代後期とみられる土器とともにうなぎの骨が大量に出土されました。

このことから縄文時代の人がうなぎを食用としていたということが分かります。
奈良時代に編さんされた万葉集には、「武奈伎(むなぎ)」という名前で、夏バテに効き滋養のある食べ物としてうなぎが登場しています。

うなぎを蒲焼にして食べる調理法は、室町時代にはすでに存在していたことが判明しています。
「蒲焼」という名前の由来は植物の「蒲(がま)の穂」から来ており、当時はうなぎをロール状にして串にさして焼いていた形が似ているからだと言われています。

江戸時代には江戸でうなぎの蒲焼が大流行し、料理店だけでなく屋台でも販売されていて、江戸の蒲焼の名店をランキングした「江戸前大蒲焼番付」が出たほどです。

うなぎと言えば浜名湖なのは何故?

うなぎの名産地として多くの方が思い浮かぶのは、何といっても静岡県の浜名湖周辺ではないでしょうか。
浜名湖のある浜松市がうなぎの名産地といわれる訳は、「うなぎ養殖発祥の地」だからです。

現在浜松では、うなぎは浜名湖の湖畔に掘られビニールハウスの中の「養鰻池」で育てられています。

池の水はボイラー設備によって一年を通して30度に保たれ、出荷前にうなぎの臭みを抜くために井戸水を張った「立て場」をすぐそばに備えています。
そんなうなぎを養殖する大規模養鰻池が最初に建てられたのは、ここ浜松なのです。

浜松のうなぎ養殖のはじまり

今から130年ほど前、1891年(明治24年)に原田仙右衛門という人物が静岡県浜名郡(今の湖西市)に約7ヘクタールの池でうなぎを養殖し始めました。

1900年(明治30年)になると、浜名湖周辺で後に浜名湖養魚漁協組合長を務めた服部倉次郎が8ヘクタールの養鰻池でうなぎの養殖を開始。
これが浜名湖でうなぎを養殖した最初です。

服部倉次郎が浜名湖周辺でうなぎの養殖をしようと思い立ったのは、実は東海道本線の電車の中。
うなぎの養殖研究のために愛知県に向かう途中、浜名湖を車窓から見て「浜名湖はうなぎの養殖に適しているはず」と思ったのだとか。

こうして服部倉次郎は浜名湖周辺でうなぎ養殖を始めました。
天然うなぎを採った際に捨てられていたうなぎの幼魚を引き取り、えさを与えて成魚にまで育てる方法で大量生産を可能にし、うなぎ養殖の事業化に成功したのです。

100年以上もうなぎ養殖が発展したわけ

服部倉次郎が直感した通り、浜名湖は地理的環境や条件がうなぎ養殖に適していました。
まずは浜名湖周辺の気候です。
日照時間が長く一年を通して温暖な気候がうなぎの成長に適していました。

平たんな土地は、広い養鰻場を建設するのにぴったりです。
ミネラル成分豊富な地下水が流れ込み、うなぎの餌となる小魚が豊富に採れたのも浜名湖ならでは。
小魚以外では蚕がうなぎの餌となっていましたが、浜松市では紡績業が盛んだったため蚕も苦労することなく手に入れられました。

また浜名湖や近くの天竜川ではうなぎの稚魚がたくさん採れたので、養殖するうなぎに困ることがありませんでした。

さらに東京や大阪といった商圏のちょうど中間地点にあたり交通の便が良かったのも浜名湖でうなぎの養殖が大成功した理由の一つです。

うなぎの養殖地である浜名湖の魅力

浜名湖はうなぎの養殖以外にもたくさんの魅力があります。

まずは自然が豊かで多くの生き物の生息地となっていること。
浜名湖は海水と淡水が混じりあう「汽水湖(きすいこ)」のため、海の生き物も淡水の生き物もいます。

ウナギなどの魚類だけでなくアサリなどの貝類、鳥類や甲殻類なども生息。
浜名湖ではうなぎ養殖の他にもアサリや牡蠣の養殖も盛んに行われています。

また車エビやトラフグは卵から稚魚になるまで人の手で育て、ある程度大きくなったら放流し、海で大きく育ってから捕るという栽培漁業が盛んです。

浜名湖周辺には「浜名湖ガーデンパーク」や「浜松市フラワーパーク」など、多くの人の憩いの場になっている公園もあり、休日には地元の家族連れなどでにぎわっています。

浜松で育ったうなぎ、浜名湖うなぎとは?

浜松で育ったうなぎは「浜名湖うなぎ」と呼ばれ、日本のうなぎのブランドの一つとして知られていますが、実は浜松で採れたうなぎがすべて浜名湖うなぎと名乗れる訳ではありません。

浜名湖うなぎ」と呼ばれるためには、浜名湖および天竜川など静岡県内で採れた稚魚(シラスウナギ)を使うことが基本で、「浜名湖養魚漁業協同組合」の組合員が養殖したうなぎに限られます。

浜名湖養魚漁業協同組合事務所

これら組合員はうなぎ養殖発祥の地に伝わる伝統の技術と、独自の研究開発で生み出された最新の養殖方法で育てています。

浜名湖うなぎは食の安全・安心にも繋がる「トレーサビリティ」にも取り組んでおり、稚魚の採取地や使用した飼料、池の場所や飼育用水の成分など、個体一つ一つの養殖履歴を消費者が追跡できるようになっています。

また浜名湖うなぎは「しずおか農林水産物認証」にも認定
水産物にもこうした認定を付けているのは静岡県だけです。

かおり風景100選に認定された浜松のうなぎ

浜松のうなぎは、環境省が監修する「かおり風景100選」にも認定されています。
「かおり風景100選」とは、香りと記憶をテーマとして海や花木、食や文化などの風景を日本全国から100か所選んだもの。
この「かおり風景100選」に『浜松のうなぎ』が選ばれました。

浜松市内には数十件の鰻料理専門店があり、お店のある通りを通るだけでうなぎの蒲焼の香ばしくて甘い香りが漂ってきます。

浜松市は腹開きでうなぎを蒸さずに焼きだけで調理する「関西風」と、背開きで一度うなぎを素焼きし、一旦せいろで蒸してからたれを付けて焼き上げる「関東風」が丁度交わる地点。
市内にはこの関西風と関東風、二つの方法で調理された蒲焼を提供するお店があります。

本来ならそれぞれの土地に行かないと食べられないうなぎの蒲焼ですが、浜松なら一か所で二通りの蒲焼が楽しめるという訳です。

浜名湖で採れた安全安心で質のいい浜名湖うなぎを、関西風と関東風の二つの調理方法で食べられる浜松に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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